ブログを御覧いただきありがとうございます。
津軽三味線奏者の佐藤壽治です。
昨年はいろんな事があったと元旦の記事に書いたのですが、いやな事もありましたし、良い事もありました。
良い事の部分で、知人の家の片づけを手伝う事になり、いろんなものを頂きました。
もともとは工具(ハンドツールが主)を使いませんか?という話からなのですが、自分が使えるものもあれば使えないものもたくさん。
また知っている工具なら即決できるのですが、知らない工具もたくさん存在し、その都度調べていくと、工具ひとつひとつにたくさんの知識と経験が詰まっていることが分かりました。
いろんな仕事がありますが、それぞれ深いですね。
さて、工具以外にも資材がありまして、写真は木材なのですが手になじみのある感触。
たぶんですけど、黒檀か紫檀か、もしかすると紅木というものです。
日本だと仏壇の装飾部分などに彫刻をあしらいたいときに使ったりします。
中国では家具に使ったりして、見事な彫刻をするのですが、これって三味線の伴奏時にすごく助かるものに変わります。
ギターでいうところのカポ、カポタストと言われるネックを任意のフレット位置で挟んでチューニング全体を簡単に半音ずつ上げることが出来るという優れものなんですが、わが家では「かせ」と呼んでます。語源がなになのかは分かりません。
たぶん糸を掴んでしまうような機能で働くので枷なのでしょう。
津軽民謡だと男のひとへの伴奏ではそう困らないのに、子供や女のひとへの伴奏時に困ることがある曲があります。調弦を高いキーへ持っていくのですが、張力に絃が耐えられなくなってしまう時にこの「かせ」が役立つわけです。
秋田民謡の伴奏をするときなどは出番が多いです。津軽民謡であれば十三の砂山やりんご節、数え唄も使う事が多いです。
おそらくですが、男のひとが唄って2尺前後のキーの高さが確保できる曲は、女のひとや子供に伴奏するときは悩む奏者も多いのではないでしょうか。
ちなみに、三味線には短棹と呼ばれる短いタイプの三味線があるのですが、棹が短くなった分張力をかける事ができるようになります。
しかし、数種類の三味線を揃えなくてはならなくなるため、購入金額を考えるとあまり現実的でない時代がありました。
昭和中期、民謡ブームが到来していた頃、興行が行われていた時に必携アイテムになったんだと思います。荷物をなるべく減らすという、興行で全国各地を回っていた芸人の考えた知恵ですね。
装着すれば音色は変わってしまいますが、キーは唄い手さんの欲しい高さに合わせる事が出来て、なおかつ弾き方に悩む事が無くなります。
「さわり」という装置が三味線にはあるのですが、三味線らしい音になるこの装置を「かせ」は無効にしてしまいます。
それを避けるために調弦法を変え、押さえるツボを変えて演奏する「替え手」を覚える必要がなくなるのです。
ただ、音色の部分は犠牲になりますよ…という事なんですが、興行の時は荷物の運搬も仕事のうちになるので、これを考えた人ってほんとに頭が良かったんだと思います。
わが家にある「かせ」は折れてしまった黒檀の糸巻きを再利用しています。適当な長さと強度を保てる細さ厚さに切って、糸道を入れて、ゴムを取り付けると出来上がりというわけなんですが、この資材を見た時に「かせ作成に良さそう」とパッと思い浮かびました。
内職で「かせ」を作ってみようかしら。
それなりに工具も揃ったし、出来るかも出来ないかも。
自慢できるくらいの出来栄えだったら記事にします。
ではまた。
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