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津軽三味線奏者の佐藤壽治です。
『分からない事があったら聞いてください』
親切にも聞こえる言葉なのですが、場合によっては、混乱しか招かない言葉でもあったりします。
親切な言葉として聞いてもらえる条件は『自分の知り得た情報を相手に伝え尽くした上で』であり、『伝え尽くすのは現実は難しく、必ず抜けや忘れがあるので、説明の補填を速やかに行えるように』最初の言葉を投げかけておくのが正解だと思います。
過去に、リサイクル産業小売大手のBOOK・OFFに勤めていた頃、勤務する際の作業行程をまとめたマニュアルがありました。
中身は、来店したお客様への挨拶から、査定や清掃などに至るまで、細かく記載されていました。
正直、これらを全て覚えなくちゃならないの?と思うほどの量でしたが、社員からお店で働くアルバイトの皆さんまで、そのマニュアルを守りさえすれば店舗での混乱は少なく、とても円滑に営業することが出来ていました。
でも必ず例外という物事が起きます。
そこで初めて機能するのが『分からない事があったら聞いてください』であり、店舗責任者や上司へと相談して問題解決へと進めるようになるわけです。
反対に、マニュアルに書かれている内容を相談した場合はどうなるか?というと、想像しやすいと思います。
『もう一度マニュアルを読んで下さい』や『もうちょっと勉強しましょうか』など、遠回しに『そんな事いちいち聞いてくるな』と言われます。
この場面の間で、親切なのか混乱を招くのかの分かれ道が存在してしまうのです。
『尽くす』ということは面倒くさいし、大変な労力と時間が必要だったりするものです。ひとりで仕事をしているなら大丈夫ですが、関係各所まで含めて考えるとそう都合よく物事は進みません。やっぱり必要最低限、当然最低限より上までの説明をして初めて人は動ける、人を動かせるのだと思います。
師匠という立場になると自分が中心ともなるので、『なんで出来ないの?』という疑問になることがあります。
右手と左手が別々の仕事を同時に行えるようになるには、相当な回数と時間のかかる訓練が必要です。習いに来た生徒さんは、その訓練を始めてどのくらいの時と回数が経っているのか考えなくてはなりません。月に3回のお稽古日をしたとして年間36回。
自宅でどのくらいお稽古をしてるかによっても変わりますが、毎日複数人と複数回お稽古をする師匠という立場の人よりはるかはるか回数も時間も足りません。
それらを踏まえた上で対応しないと生徒さんの現実と師匠の現実は合わないわけです。
『分からない事があったら聞いてください』
わたしもよく使います。
そして、それでよく混乱を招きます。
反省しなくてはならないのですが、生徒さんのお稽古の進捗などを考えていると『尽くす』まで出来ないこともあり、毎度悩みの種になってもいます。
例を挙げると、
・力一杯叩くお稽古と、力を抜くお稽古
・可能な限り早く演奏するお稽古と、可能な限りゆっくり演奏するお稽古
それぞれ正反対の事をやらないと分からない事もたくさんあり、それらを経験してもらって初めて理解が得られる事もあります。時間もかかるし、お互いに労力もかかります。
他にも事務的な連絡事項なども同じで、抜けや忘れが存在します。
人間だもの、としてしまえば終わりなんですが、これはどんな業界業種にもつきまとう永遠の課題なのかもしれません。
なんでも完璧に出来たらいいんですけど、それはむずかしいんですよね。あっはっは。
今日も1日がんばりましょう。
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