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津軽三味線奏者の佐藤壽治です。
むかーしのお話です。
今の話ではありません。
歌手、とは誰でもなれる職業ではありませんでした。
人より優れた歌唱力に、人を引き付ける声の色。
なにか不思議さを感じさせる唄いまわしなどが備わっていて初めて歌手になれたそうです。
もちろんキーの高さや声量なども基準になるのですが、それだけで十分ではなかったわけです。ですから「なりたくても、なれなかった」人が大勢います。
津軽民謡界に限ると、昔は男性でも三つ物(津軽じょんから節、津軽おはら節、津軽よされ節)を2尺以上(4本以上)で歌えるくらいでないと「唄は諦めなさい」と言われたそうです。
それで泣く泣く職種替えしたひとが多かったわけです。
今年に入って亡くなった菊池鉄男さんが若かった時の唄声を聞くとそれはそれは驚くものなのですが、当時はそれが当たり前であったそうです。下手をすれば、そこまでの人であっても仕事に加われないようなこともあったそうです。
それぐらい歌手になるのは難しかったのです。
今は?というと、違います。
誰もが唄い、誰もが舞台に立てるチャンスがあります。
あとは見た目が大事な部分も。。。
人を見る目が変わり、才能というものの見方が変わってきたんだと思います。
「チャンスは平等にあるべきであり、そのチャンスを活かせる努力を皆がするべき」誤解の無いような言い回しにするとこんな感じです。
狭かった門が広く広く開いている時代になりました。
しかし・・・
歌手って増えてるかどうか?というと、演歌やアイドルなどは増えたかもしれませんが、他のジャンルでは増えていないものもあります。
愛好者が少ないこともあったり、現代でも昔と同じ敷居の高さを維持していたりといろんな理由がありますが、ジャンルによっては全く増えていないのは間違いありません。
津軽民謡界もそのひとつです。
民謡界全体でいくとそうでもない地域や地区もあるのでなんともいえませんが、津軽民謡界に関しては津軽三味線奏者はどんどん増えても、津軽民謡歌手は全く増えてきません。もともと難しいですし、条件が特殊な部分も大いに関係するのでしょうが、そのうち無くなってしまうんじゃないかと感じています。
現に津軽出身の歌手は先細りの一途をたどっていますし、本場より地方が繁栄している有様です。
そしてそれをなんとかしようという動きも見当たらない・・・というか、津軽では民謡=道楽者の趣味(これはかなり上品な表現)ですので、人の目を気にするので存続できないのでしょう。
なんとも悲しい現実です。
大型連休にまた青森に行き、民謡の大会で伴奏する機会があります。
挑戦するすべての人が特別な存在なのだ、と心に伴奏しようと思います。
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